俺が俺について嘘しか言わない
前方後円型空中機動要塞JOYH-TV。帝国紀290年、内陸地方リュッテンヒンゲン国防工廠にて陸軍主導のもと極秘裏に設計さる。翌291年9月ロールアウト。全長29800mというあまりに巨大な機体のため、試作品モックアップは1/6にて製作された。それでも使われた木材は近隣の山々をのきなみ禿げ上がらせたと言われている。ちなみに真偽の程は不明。6度の空洞実験を経、292年10月をもって建造に入る。当時すでに秘密兵器の建造が各国首脳の話題に登ったが、陸軍当局の細心な機密処理により、件の噂は新兵器が作られている「らしい」というレベルにとどまった。建造には5000人規模の人員が投入された。これらの関係者は上下の差なく厳重に監禁され、だれひとり宿舎から出られぬ状況下で労働を強いられたという。作業の過酷さがうかがえる。建造には既存の屋根つきドライドック3棟を改造したものが使用された。外部からは3つ並んでいるように見えるため敵国偵察衛星の目をかいくぐるのに一役買ったという。噂の新兵器は新鋭艦隊群であるというミスリードさえ福次効果として得られたほどだから、当局の周到な情報作戦はよほど功を奏したのだろう。そのドック内部は貫通処理を施され、巨大な吹き抜けと化していた。資料ではこの空間にてほぼ全ての工程を消化したと記されているが、実際は一部の工程を(それとは悟られぬよう)外部工廠に委託していたそうである。帝国紀293年4月9日、完成。かねてから抵抗勢力の攻撃は熾烈を極め、一刻も早く機動要塞の完成が急がれる中、予定も11ヶ月繰り上げて完成させた彼らの技術レベルは当時群を抜いていたと指摘できるだろう。翌4月10日には公試が行われた。しかしこのとき、偶然通りかかったスパイ衛星に探知されてしまう。護衛管轄が陸軍から空軍へ移管した直後の出来事であった。20分後には敵国迎撃衛星が軌道修正を完了し、午前2時19分、放たれた電磁パルスレーザーによって轟沈。機動要塞JOYH-TVは一度として戦果を上げることなく海に沈んだ。









